好きになった方の負け

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「久しぶりだね」 「本当……」 准君の視線がようやく私に向く。 その瞳が揺れている気がした。 「何?知り合い?」 兄は私ほど気にしていない様子。 「えぇ」 准君はそれだけしか言わない。 自分の顔が歪んだのがわかる。 「先輩こそ、准とお知り合いですか……?」 先輩ということは、仕事仲間なのだろう。 「あぁ。義理の弟」 「え?」 彼女が驚いた顔をした。 「准、結婚したの?」 「うん」 「えぇ、知らなかった。意外!」 「ずっと会ってなかったからね」 准君が“ふっ”と笑う。 「……そうだね」 彼女の瞳が私を見つめる。視線がぶつかり「どうも」と彼女に頭を下げられ、私も下げた。 「妹の寿々」「妻の寿々」 二人の紹介は同時。 私はもう一度、頭を下げる。
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