好きになった方の負け

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「ちなみに紺野と俺はなんでもねーよ」 兄が両手を上げ小さく首を振った。 「たしかに何でもないですけど、あえて否定されると傷つきます」 「いや、ちゃんと否定しとかないと、そこは」 「そうですけど」 可愛らしく唇を尖らせる彼女から目が離せない。 私の視線に気づいたのだろう。 「それにしても綺麗な妹さんですね?」 突然のお世辞に、私は顔を下に向けた。 「俺に似てるだろう?」 「いえ、似てませんよ」 「それはどういう意味だ?」 「あ、先輩もいい顔なんですけど、妹さんとは種類が違うって意味ですよ」 両手をぶんぶんと左右に振って説明している彼女に向ける兄の顔は優しい。 兄が可愛がっているのなら、きっと性格もいいに違いない。 「種類ってなんだよ」 「色々あるじゃないですか。ケチャップとかポン酢とか」 「そこは醤油とかソースとか例えるだろ?」 「ははっ、つっこんでくださり光栄です」 二人の様子に准君が「仲がいいですね」と笑った。 「ところで、お義兄さん今日もお仕事なんですか?」 「あぁ、本当なら休日だけどな」 「大変ですね」 「まぁな……」 「あまり無理をされないでくださいね」 准君の心配に、彼女が「准、本当に先輩の義弟なんだ」と割った。 「変な感じ?」 「うん」 それから私をチラ見して「本当に結婚したんだね」と呟いた。 その声に切なさが含んでいる気がして、私はたまらず、彼の腕あたりの服をギュッと掴んだ。
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