好きになった方の負け

17/23

112人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「なるほどね」 兄は納得するものの、私は全然納得できずにいる。 「あ、そうだ寿々、近く土産を渡しに行くから。なかなか今月は行く暇がなかったから、来週あたりかな」 「ありがとう」 兄の土産は毎回センス抜群。 いつも“やったぁ”と喜ぶところ。 そのため私の平坦な口調に兄が不思議に眉を寄せた。 それから兄は「紺野、そろそろ行こう」と、彼女の肩を叩く。 「あ、はい!」 兄に私のやきもちがバレたに違いない。 申し訳なく思う自分もいるものの、引き留めたくはなかった。 私ってこんなにわがままだった? 胸を押さえる。 「じゃあな」と兄が言うと彼女は「失礼します」と私に頭を下げた。 それから准君に「またね、准」と手を振る。 准君は「あぁ、また」と手をあげた。 私はというと、ますます彼の袖を強く掴む。 「……准君」 我慢できず彼を呼ぶと「皺ができてる」と眉間に指を押し付けられた。 准君の瞳は優しい。 「……気になるの」 私はまるで子供みたいに唇を尖らせた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加