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「なるほどね」
兄は納得するものの、私は全然納得できずにいる。
「あ、そうだ寿々、近く土産を渡しに行くから。なかなか今月は行く暇がなかったから、来週あたりかな」
「ありがとう」
兄の土産は毎回センス抜群。
いつも“やったぁ”と喜ぶところ。
そのため私の平坦な口調に兄が不思議に眉を寄せた。
それから兄は「紺野、そろそろ行こう」と、彼女の肩を叩く。
「あ、はい!」
兄に私のやきもちがバレたに違いない。
申し訳なく思う自分もいるものの、引き留めたくはなかった。
私ってこんなにわがままだった?
胸を押さえる。
「じゃあな」と兄が言うと彼女は「失礼します」と私に頭を下げた。
それから准君に「またね、准」と手を振る。
准君は「あぁ、また」と手をあげた。
私はというと、ますます彼の袖を強く掴む。
「……准君」
我慢できず彼を呼ぶと「皺ができてる」と眉間に指を押し付けられた。
准君の瞳は優しい。
「……気になるの」
私はまるで子供みたいに唇を尖らせた。
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