好きになった方の負け

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過去の話を掘り返しもいいことはない。 それはわかっているのに、私の心は止まらない。 こんなに心が狭かった? 彼は許してくれるけれど、すっきりしない。 先ほどまで綺麗に映っていた街路樹も、今はくすんで見えた。 「寿々、マンションのチラシまた入っている」 「あ、本当だ」 すっかり忘れていたけれど、はじめ新居探しをしていたのだった。 家の郵便受けに入っていたいくつかチラシを見て、思い出す。 「気になるところがあれば来週辺り見てみてみようか」 「うん、そうだね」  なんとなくの返事に准君が笑う。 「入って、寿々」 「うん」 准君に背を押されつつ中へ入るとすぐ、彼が私の背中ごとぎゅっと包んだ。 「准君……」 「ヤキモチ寿々可愛い」 「……全然可愛くなんてない」 やめて……と身体をよじると、さらに強く包まれる。 「ねぇ、彼女はどうして結婚してること知らなかったの?」 准君が私を甘えさせる。 気になっていたことを口にした。
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