好きになった方の負け

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「どうですか?ここはつい最近空きが出まして、私としてはおすすめの物件です」 今の私は物件より、近所の不動産会社の物件案内をする女性スタッフの着ているスーツのブラウスのボタンの開き具合の方が気になっていた。 「そろそろ新居探しをしない?」と今朝准君に言われた日曜日の午後、不動産会社に行くと“おすすめの物件がある”と言われ、連れてこられたところだった。 物件自体、第一印象悪くない。 しかし、私はスタッフの准君に向ける視線が色づいていることのほうが気になってしまっている。 それにさっきまで、ブラウスのボタンはもっと上まで締めていた。 メイクだって、濃くなってない? 車で連れてこられる前、少し待たされたが“もしかして?”と疑ってしまう。 彼は私と結婚しているのに、しかもお客様であるのに、なんだか面白くない。 「寿々は一番見たいのはキッチンって言ってたよね?」 准君は私の今の醜い心の内なんて知らない。 「あ、うん。見たいの」 ぎこちない笑顔を乗せ、彼の腕をギュッと掴んだ。
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