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「長い付き合いなら、お互いの知人の繋がりで結婚したことを知っていそうなものなのに……。元カノだったから知らせなかったのかなって疑っちゃう……」
口元をぷっと膨らませてしまう。
先ほど説明させたことを謝ったばかり。
それなのに私はさらに追求している。
きっと普通なら“ウザい”という思われるものだ。
「付き合ってなんかないよ」
「……本当?」
口元はそのままに、後ろに顔を向けた。
准君の瞳は穏やかで、嘘を吐いているようではない。
「本当。お義兄さんにも説明したとおり、彼女とは大学に入ってからは会うこともほとんどなかったから、自然に疎遠になっただけだよ」
「彼女は准君が昔好きだったりして……」
「……」
准君が少しだけ固まったのを私は逃さなかった。
「そうなの?」
「……寿々に嘘を吐きたくないから言うけど、友人づてに中学の頃そんな話を聞いたこともある。けれど、直接言われたことはないよ。それに彼女は恋人もいたしね」
彼女の表情を思い出す。
准君を見つめる瞳は切なかった。
だが、過去の恋心は責められない。
「……そっか」
「うん」
「准君は好きじゃなかった?」
「好きじゃなかった」
准君の即答が嬉しい。
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