好きになった方の負け

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「本当にただの友人。彼女もそう思ってるよ」 「……可愛い人だったね?」 「寿々より可愛い人はいないよ」 こんな時なのに照れてしまう。なんとなく悔しくて下唇を噛み締めた。 「彼女のことは気にしなくていいよ」 「……うん、わかった」 ようやく納得すると彼が「もう聞きたいことはない?」と尋ねた。 「……うん、大丈夫」 「そう」 「でも……もし、連絡がきたら教えてくれる?」 私ってなんて嫉妬深いの……。 准君に呆れられてしまうのでは、と不安になる。 けれど、やっぱり止められない。 だって、再会したことを機に連絡を取り合うなんて嫌だから。 「もしきたら、もちろん」 「……ごめんね」 「ううん」 准君が私の頭の上にキスを一つ落とした。 「今日は私、嫉妬してばっかり……」 「そうかな?」 「うん……。だって、彼女だけじゃなくて不動産屋さんにも怒っちゃった……」 「怒った寿々も好きだよ」 准君が優しく言うので「そんなこと言われたら調子乗っちゃうよ?」と返してしまう。 「乗っていいよ」 優しい准君にたくさん甘えたい。 私は身体を反転させ、彼に抱きついた。 「大好き……」 “ごめんなさい”の代わりの告白に彼はキスを頭にもう一つ落とした。 「准君」 彼と見つめ合うとすぐ、唇にキスが落ちる。 「僕の方が好きだよ」 キスの合間の告白が私を熱くさせる。
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