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「寿々、ここ、食洗機ついてるよ」
「本当だ、じゃあ今のものは……」
一年前、置き型タイプの食洗機を購入した。
共働きだったから大活躍し、今でももちろん一生懸命に稼働してくれている。
それがいらなくなるならどうしよう、という話をしようと思っていたところに「そうなんですよ、食洗機ってとても便利なんですよ。ビルトインタイプなので場所にも困りませんし、家事でお疲れの奥さまの強い味方です。毎日の家事は大変でしょう?」と割られた。
契約をとりつけたいのに一生懸命に営業しているのだろう。
私だって、ノルマの大変さは知っているから。
まだこの時はそう思えた。
「奥さまはお仕事されてらっしゃるのですか?」
「あ、いえ……」
「それなら息抜きができず、よりお疲れなのではないですか?」
「そんなことはないです、大丈夫です……」
苦笑しつつ「色々、触ってみてもいいですか?」と質問する私に「もちろんです」と答えた彼女は「旦那様は“ここが見たい”というような場所はありますか?」と准君に振った。
「そうですね、浴室は気になりますかね」
「あ、それならここの浴室は広めの造りで浴室乾燥機も付いているので気に入られると思いますよ。見られませんか?」
“もしかして、私をここに一人置いていくつもりなの?”と、たじろぐ。
つい「え……」と、声が漏れた。
「それはあとで、見せてもらいます。まずはキッチンから。寿々、ここ結構広いよ」
「本当……」
准君が私の背に合わせ腰を屈ませ、キッチンのキャビネットを引き出した。
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