好きになった方の負け

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それは奥行きがあり使いやすそうだった。 今のキッチンは狭いので、鍋やフライパンを増やせないのが悩み。 そこに彼女が准君の近くに寄り、「こちらは土鍋やホットプレートも仕舞えるくらいの広さです」と、一番下のキャビネットを開けてみせる。 その際屈むため、スーツのスカートが太ももの半分まで上がる。 ストッキングを履いた足が丸見えになり思わず目を逸らしてしまう。 もう少し上がれば、下着が見えてしまうのでは、と動揺するくらい際どい感じだ。 きっと、准君にも映っているに違いない。 男性にしてみたら、きっと嬉しいアングル。 胸がモヤモヤとし、嫌に感じた。 自然に下唇を噛み締めてしまう。 私はこんなに嫉妬深かった……? 「そういえば大きな土鍋もホットプレートも持ってないね?」 准君は私に寄ると、肩を抱くようにして頭にポンポンと優しく手を弾ませた。 彼の視線が私にあることが、ホッとする。 「そういえば……」 「大きな土鍋、買いに行きたいね」 「うん」 「寿々の作った豆乳鍋美味しいからたくさん食べたい」 「……うん」 視界の端で彼女が立ち上がるのが見えた。
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