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「はい……」
うるっとした女子っぽい視線を向けられる。
それから視線を逸らし手を貸した。
「すみません」と手を取り立ち上がった彼女に「大丈夫ですか?」と一応気にした。
「はい。私ったらお恥ずかしい……」
両手で頬を隠し、腰をよじる姿は可愛らしい。
きっと、可愛い見せ方をわかっているタイプだ。
それでも私は心で“変にしかけてくるからでしょ”と思いつつ「お怪我をされなくてよかったです」と言った。
「あの、帰られるのならお送りしますよ」
私より少し背の高い彼女が私越しに、准君を上目遣いで見つめる。
まだ、続けるの?
心で大きくため息を吐く。
我慢できず「いりません、大丈夫です」と言ってしまった。
きっと彼女は彼に尋ねたと思うけれど。
「寿々、行こう」
准君が私の肩を優しく抱くので「うん」とすかさず乗る。
もう彼女は何も言わなかった。
「准君、ごめんね」
「え?」
外に出ると、申し訳なさが沸き起こってくる。
「あの部屋よかった?」
物件はよかったと思うから。
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