好きになった方の負け-2

4/23

139人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
一階へ降りると“二階建てなんだな?”とやはり聞きなれない声がし、そして彼と親しい様子が窺えた。 “誰?” 不思議に思い、我慢できず玄関へ足を向ける私は、顔を出しすぎ玄関に立つ男性と目が合ってしまった。 「こんにちは!」 爽やかな挨拶に、爽やかな笑顔を向けられる。 つられて「こんにちは」と微笑んでしまうが、心でやっぱり“誰?”と言った。 しかし准君は「寿々」と困った顔をする。 「お久しぶりです奥様。相変わらずお綺麗ですね」 「え、はは……」 突然のお世辞に小さな空笑い。 准君は私の隣に立ち「ちょうどさっき話に出たKOKA工務店の柿栖だよ」と教えた。   「あぁ……」 柿栖さんを見て、“たしかこんな顔の人を見た気がする”と思いつつ「結婚式ではありがとうございました」とお辞儀した。 「いえ、こちらこそありがとうございました。とてもいい式でした」 「ありがとうございます」 「何より新婦さんがお綺麗で、僕も結婚したくなりました」 「……お世辞がお上手なのですね」 営業マンなのだろう。 准君とはまた別のタイプ。 私の心は戸惑っている。 「今日はどうして……?」 柿栖さんを見て、准君を見つめた。 気のせいか准君の眼鏡の奥の瞳に焦りが見えた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

139人が本棚に入れています
本棚に追加