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一階へ降りると“二階建てなんだな?”とやはり聞きなれない声がし、そして彼と親しい様子が窺えた。
“誰?”
不思議に思い、我慢できず玄関へ足を向ける私は、顔を出しすぎ玄関に立つ男性と目が合ってしまった。
「こんにちは!」
爽やかな挨拶に、爽やかな笑顔を向けられる。
つられて「こんにちは」と微笑んでしまうが、心でやっぱり“誰?”と言った。
しかし准君は「寿々」と困った顔をする。
「お久しぶりです奥様。相変わらずお綺麗ですね」
「え、はは……」
突然のお世辞に小さな空笑い。
准君は私の隣に立ち「ちょうどさっき話に出たKOKA工務店の柿栖だよ」と教えた。
「あぁ……」
柿栖さんを見て、“たしかこんな顔の人を見た気がする”と思いつつ「結婚式ではありがとうございました」とお辞儀した。
「いえ、こちらこそありがとうございました。とてもいい式でした」
「ありがとうございます」
「何より新婦さんがお綺麗で、僕も結婚したくなりました」
「……お世辞がお上手なのですね」
営業マンなのだろう。
准君とはまた別のタイプ。
私の心は戸惑っている。
「今日はどうして……?」
柿栖さんを見て、准君を見つめた。
気のせいか准君の眼鏡の奥の瞳に焦りが見えた。
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