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准君はわかりにくいようでわかりやすい。
眼鏡の奥の瞳を覗くと、彼の喜怒哀楽が見える。
「どの辺りに考えてるの?准の職場に通いやすい場所?」
「まぁ、それもあるけど、ファミリー向けの治安のいい場所がいいかな。もちろん手が届く範囲で」
お茶を淹れた私は、二人の前に「どうぞ」と湯飲みを置いた。
柿栖さんは「ありがとうございます」と爽やかに笑う。
いかにも営業マンの笑顔に私もぎこちなく笑い返す。
「寿々も座ったら?」
准君が私の手首を引っ張った。
「あ、うん」
彼の友人の前で手を捕まれ、少し戸惑った。
恥ずかしくて。
それでも准君のすぐ隣に腰を下ろすと、彼は手を離した。
「准、本当に結婚したんだな」
笑いもせず納得した様子で柿栖さんは言った。
「式に来ただろ?」
「おぅ。でもなんか今の方が現実って気がする」
紺野さんも言っていたが、そんなに彼は冷めた人間だったのだろうか。
私は熱い彼しか知らないから、重ならない。
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