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柿栖さんはまるではじめから私たちに薦めるつもりだったように、話をうまく進めていく。
まだマンションの見取り図しか見ていないが、いいかもしれないと思う私は単純だろうか。
「奥さんが気にされるところはやはりキッチンではないですか?」
「えぇ、そうです」
「でしたらこちらのスタイルがいいかなぁ……」と呟きつつ、柿栖さんは三タイプある見取り図の中から一つ選んで私に見せた。
どうやら部屋により間取りや作りも若干違いがあるらしい。
「わ、素敵……」
「でしょう?こちらのタイプは冷蔵庫、シンク、調理台、と短い歩数で移動しやすくするために三角形に近い動線にしてありますので家事をしやすいです」
柿栖さんは前のめりになり、指で教える。
「……なるほど、やりやすそう」
「でしょう。料理好きな方にピッタリですよ」
「へぇ」
今日見た物件よりも素敵だと思った。
それに准君の友人だから、ヤキモキすることもない。
ふと、失礼な女性スタッフを思い出し、もし本当に買うのならばいいかもしれない、と思い始める。
「奥さん向きではないですか?准からは料理がお得意だとお聞きしているので、長くいても疲れませんよ」
准君は友人に私の話をすることがあるの?
私が友人にするのはわかるけど、と准君を見つめると彼と視線がぶつかった。
「なぁ、准。いつもノロケてばっかだよな」
「……まぁ否定しないけど」
准君が私の頬をサラリと撫でた。
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