April*ひみつの漣《さざなみ》くん

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 初恋はラムネみたいだ。  真ん中に絞りのあるコッドネック・ボトルのガラス瓶に入ったソーダ。栓になっているビー玉を落とすと、シュワッと炭酸が湧き上がる。口に含むと、シュワシュワが口の中に広がって、甘さが体の中に沁み込んでいく。恋心はラムネみたいに、湧き上がって、弾けて、甘いトキメキを、私の心に広げていくの。  飲み干してしまうと少し寂しい。瓶の途中にあるビー玉みたいに、まあるい(なみだ)が残るんだ。  夢を見た。どんな内容だったかは、覚えていなかった。でも、いい夢だったと思う。なぜなら、クラスメイトの(さざなみ)くんが出て来たから。いつも眠そうで、机の上で頬杖をついて、ぼぅと空を眺めている漣くんが、私に向かって微笑んでいた。いい笑顔だった。それだけで、私は幸せな気分で目が覚めた。  ベッドから起き上がり、カーテンを開ける。窓から光が入り込んで来て、新しい朝を告げる。天気が良さそうなので、窓を開け、私は裸足のまま、ベランダに繰り出した。  潮の香りがする。生まれた時から、ずっと私の傍にある匂い。私の家は、山の中腹にあって、私の部屋のベランダからは海が一望できる。
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