April*ひみつの漣《さざなみ》くん

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 周りが山で囲まれた内海のある小さな町。そこが私、水木萌果(みずきもか)が生まれた町だ。  ベランダから見える海の先には、小島があった。海の上にぽっかりと浮かんでいるような、緑に覆われたドーム型の小島だ。小島の入り口には、大きな朱色の鳥居が建っていた。その小島は、海の神様が祀られているご神体(しんたい)らしく、私のひいひいひいお爺ちゃんが生きていた頃より、ずっと昔から、この町を災いから守ってくれているのだという。  鳥居は神の領域と、現世を区別するための結界だと、お婆ちゃんが教えてくれた。鳥居をくぐった向こう側が神様の領域で、こちら側が人間の世界なのだ。鳥居に向かって、私は手を合わせた。 「今日もいい日になりますように」  朝起きたら、まず鳥居に向かって拝むことが、私の日課になっていた。今日の鳥居は海に浮かんでいるように見える。潮の満ち引きによって、鳥居は海の上に浮かんでいたり、砂浜に立っていたりと、景色を変えていた。  今日から新学期が始まる。私はこの春で、小学六年生になった。小さな町なので、小学校も町に一つしかなく、クラスも各学年、一クラスずつしかない。
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