April*ひみつの漣《さざなみ》くん

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 私たちのクラスは男子13人、女子8人の合計21人。今年度の新入生を合わせても、全校生徒120人弱の田舎の小学校だ。 「いってきます」  ランドセルを背負い、玄関先でキッチンにいるはずのお母さんに向かって叫び、歩き出す。道端に咲いているスミレの花に微笑みかけ、海岸通りに続く坂道を下っていると、いきなり後ろから、黄色い交通安全帽を掴まれた。ゴム紐が首に食い込み、「うぅ」と呻き声を上げると、帽子を引っ張っていた手が、急に離れる。びよんと、ツバ付きの帽子が私の首の辺りに命中した。 「ちょっと、大知(だいち)、いい加減にしてよ」  こんなことをする犯人は解っているんですからね! と、私は腕を組み、呆れ顔で振り返った。 「ぼぅとしながら歩いてるお前が悪い」  ヒャヒャヒャと変な笑い声を上げるのは、数件先に住む天海大知(あまみだいち)だ。大知は私の同級生で、この町に住む子供は大体そうだけれど、生まれた時から一緒の幼馴染みでもある。  大知は小学生の割には背が高く、染めている訳じゃないのに、髪色が少し茶色がかっている。目鼻立ちがはっきりとしていて、実際の年齢より大人っぽく見える。
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