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小学校では、生徒も先生の数も足りなくて、部活動が出来ないので、保育園の時から野球をしている大知は、週に何日か、山を越え、隣町まで野球の練習に行っている。リトルリーグに所属しているのだ。
大知はそこでは、将来有望な選手らしい。大知の家とは家族ぐるみの付き合いがあるので、実際に家族で、大知の試合を何度か応援しに行ったことがあるけれど、野球のルールをあまり知らない私でも、大知が打席に入る度に、チームの歓声が湧き、それに答えるようにボールを打って、得点に繋げる彼を凄いと思った。調子に乗るから、本人には、面と向かって言ったことはないけれど。
そんな訳で、スポーツのできる大知は、凄く女の子にモテる。バレンタインデーには他校の女の子からも、たくさんのチョコを貰ったらしい。私からしたら、いつも小さい子供みたいな悪戯を仕掛けてくる大知が、なんでこんなにモテるのか、意味不明である。
帽子を被り直すと、私は大知を無視して、通学路を歩き出した。
「あれ? あれれ?」
大知は並んで歩くと、私の顔を覗き込む。
「目の前にいるのは、水木萌果ですか? 春休み中に太った?」
「嘘!?」
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