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ただ静かにすごしたい
彼女がいるだけで俺にとっては、すべてが愛しい大切な宝物のような日々だ。
何もしない。話しかけたりもしない。
この3年間、奇跡的に同じクラスでいれた幸せを壊したくないと過ごしていた。
俺の望みは"ただ静かに卒業したい"だった。
「朋也くん、放課後にあの桜の木の下で待っててくれない?」
俺の名前を平山真子が呼んだ。
俺の好きな平山真子が今、目の前にいることがパニックで心臓が止まりそうだ。
「あ……うん。別にいいけど?」
平然を装いメガネを外して、すぐかけ直す俺。
「ありがとう」
平山真子は、嬉しそうにチャイムと同時に席へ戻った。クラスメイトは騒然としている。
(何で、佐々木が平山さんと?)
(クラスで存在感ない佐々木だぞ?)
クラスのマドンナである平山真子がガリ勉で暗い俺を呼び出すのだから……笑うしかない。
周りのざわつきを気にもとめずに平山真子は、ニコニコと友人達と談笑していた。
卒業まで1週間のある昼休みの出来事だった。
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