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呼び出し
女子の間で話題の『伝説の桜』で、俺は平山真子を待っている。いわゆる桜の木の下で告白をしたら結ばれると、いうベタな話である。
「お待たせ、突然……ごめんね」
「いや大丈夫です。話ってなんですか?」
1秒でも早く平山真子の前から消えたかった。
好きだからこそ、そのままの気持ちを叶えたいとも思わない。ただ静かに卒業して綺麗な思い出として持っていたいのだ。
「朋也くん、卒業式の一週間後にまたここで会いたいの」
「えっ?」
「2人で話したいことがあるんだ。きっとその頃にはこの桜も満開ね。お花見だと思って…だめですか?」
昼休みの呼び出し事件でチラチラとあちこちから視線を感じた。ある意味、公開処刑だ。行っても行かなくても地獄だったから仕方なく来るしかなかった。
「なんで、俺なの?」
「朋也くんと一緒がいいからです」
(なんで俺なんだよ!答えになってない)
答えを出せずにいたら…平山真子はそっと小指を差し出した。それはゆびきりの合図だった。
ニコッと笑う平山真子に俺は、負けた。
「分かりました。じゃあ、俺はこれで」
必死に自分の気持ちを隠しながら、淡々とゆびきりをして、素っ気ない態度でさっさとその場をは後にした。
「真子~!終わったなら早く帰ろう!」
他のクラスの女子だろうか?平山真子と同じ長い髪の毛がふわりふわりと揺れていた。俺の知らない友人らしき声に、平山真子は俺を追い越して友人がいる校門へと走っていった。
“ただ静かに暮らしたい”という思いは、まさかの平山真子によって妨害された。
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