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桜の木の下で
どのくらい歩いただろう。
一面、白光りな世界をただ歩きさ迷いつづけた。
正直、不意討ちとはいえ女子に負けたのが男として恥ずかしさで消えてしまいたい。
(これが……死の世界?)
(朋也くん、今年の桜も綺麗ね)
(平山……真子?)
(一緒に見れなくて……残念)
(あの時は、約束を守れなくてごめん!)
(ごめんね、朋也くん)
(待ってくれ!俺は今もずっと……好きなんだ!)
(……ありがとう、私もだよ)
(行かないでくれ!)
平山真子の姿が確かに見えた。
あれは、間違いなく平山真子だった。
どこか悲しい笑顔した平山真子を追いかけた。
ーーホワイトアウトのように視界が消え、平山真子は姿を消していた。
同時に、まばゆい光がこの空間を包み俺は目が覚めた。
*
俺は助かっていた。
1週間、ずっと意識がなかったらしい。
俺を刺した平山希子は、双子の姉である真子を失ったショックから情緒不安定で立ち直れず、俺を巻き込んで死のうとしていた。
だが、発見が早くお互いに適切に処置がされた。まさに九死に一生だ。
きっと平山真子が助けてくれたのだと思う。
平山真子がなぜ死ななければならなかったのか?
それは俺にもわからない。
ただ1つ言えることは
『平山真子にはもう一生会えない』
これだけは変わることのない事実。
ーー1から始まることも0にも戻ることもない。
ーー1だけを続けようとして前にも先にも進めない。
ーー1つの切なすぎた片思い。
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