神様が通る

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 西島小夜子は、幽霊が視えるという。  ゴールデンウィークが明けたぐらいから、そんな噂が学年で囁かれるようになった。高校生になってしょうもない噂を……と思ったが、実際に彼女には不思議なところがあった。  何もない空間を見つめていたり、そこに話しかけたり。頻繁に学校も休んでいる。まだ高校一年の一学期だけど、出席日数が危ないなんて話も出ている。 「不思議ちゃんだよな。家が変な宗教やってるとかいうし、かかわんねー方がいいよな」  友人の言葉に、曖昧な笑みを返す。  そんな不思議ちゃんに、入学式から惚れているなんてバレたら、何を言われるかわからない。俺も一緒に不思議ちゃん扱いされてしまうかもしれない。  俺、東雲康祐は高校生活を失敗したくなくて、保身に走るような小さい男だ。  まだ片思いの段階だしね。仮に付き合うことになったら頑張るけど。そんな言い訳を脳内で繰り広げながら、視線を斜め左に向ける。授業中の西島さんは、メガネをかけている。貴重な横顔をこっそり眺めるのが好きだ。  まあ付き合う以前に、多分彼女は俺のことを認識すらしていない。どうしたもんかねー。
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