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真剣な私の言葉に
「分かりました、この記録チップを
中武にリンダに渡します。最悪、地球に
近付いたら送信する手もありますから
出来ればシールドのしっかりした宇宙船に
して下さい」
とイチローは言った。
確かにゼルスはいなくても、ピエールや
地球の人達に攻撃される可能性はあった。
センリーのシールドは地球の兵器では
破れない、それだけが強みだった。
私は計画通り正面から長老の家へと近づいた
二人は裏手へと回った。
当然裏にも見張りはいるだろうから
出来るだけ騒ぎを起こして引き付けたかった。
「始めるぞ!」
私は立ち上がると、道に出て正面の家の
門へと向かって颯爽と歩きだした。
本来、私は偉そうにするのが好きではなかったが、ここは大統領の威厳を見せるところだと、昔ケントエドワードだった時を思い出し
体を大きく見せるよう、胸を張り、僅かに
笑みを見せながら近寄った。
見張りに見付かるのが目的だから
当然の様に見張りの男に近寄った
だが中々こっちを見ない、う~ん、私は
「やあ!見張りかな?ゼルスはいるか?」
私は大声をかけてそう聞いた
男はこっちを見るとハッとしたように
「大統領……ケントさん何でここに?」
と聞いた。成る程な、私は彼の心を探った。
彼は地球で見るような銃を肩から下げていたが私には銃口を向けなかった。
撃ったことはほぼ無いなと思えた。
間違って通りすがりの人を撃ってしまうのが
怖いのだ。
センリー人はこの十万年戦った事がないのだから当然と言えた。短命族間で戦争があったなど聞いたことが無かった。
また、マザーがそうならないように
干渉していたのだろうが。
彼らは黄金の科学者の末裔
センリーの第二期文明の担い手なのだから。
「ゼルス長老に会いたくてね、私にばかり
長命族を任せて、全く見にも来ない
同族だろうに、それにな地球のコーヒーが
飲みたくてね、この家で出してもらったと
思うんだよ」
私がニコニコ顔で話すと、短命族の見張りは
「いませんよ、勝手に人を入れるなと
言われてます、申し訳ありません」
と言った、当然だなと
「参ったなぁ~、何処へ行ったんだ?
連絡とれるんだろう、私の宇宙船では
駄目なんだよ、何とかならんかなぁ~?」
男は逡巡したが
「お帰りを、私には何も出来ません」
と真剣な顔で言った。
う~ん、固いな、しかも仲間が誰も来ない。
裏手が気になってきた、捕まっていなけりゃ
良いが。流石に銃声はしない
短命族に人を撃つ気は無いのだなと思えた。
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