君との出会い

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 私はただの桜の木。築二十五年近くになる公営住宅の南側出口、その横の緑地公園に立つ木々の中の一本。  忙しなく忙しなく日々を過ごす住民の風景を、仲間の木々たちと見守りながら、気のせいではなく、確かにそこに存在する木の精・・・・なんて、聞き手のいないダジャレを独りで言っては、独りで笑って過ごしている精霊。それが私だった・・・そう、あの日、君に話しかけられるまでは。  「あんたさ・・・前から思ってたんだけどさ、オレにしか見えてないだろ?」  ふと、下を見てみれば、可愛い顔をした少年がじっとこちらを見て立っている。ああ・・そうか、とうとう声をかけてきたんだね。彼のいる地面にふわりと舞い降りた。  「そうだね・・・私を見える人間はそうそういないからね・・・ずいぶん、久しぶりだよ、声をかけられるのは」  百年は経っているだろう。当時の男とはずいぶんと異なる服装をしている少年の姿を私が見つめていると、物怖じもせずに、その小さな手で私の身体をペタペタと触ってきた。  
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