こたつねこ。

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 そして、仕事を終えて帰宅した。  猫は――やはりというか何というか。  居なくなるということもなくコタツの上でくつろいでいた。私が室内に入ってきた音に反応してか、こちらを見ていた。目と目が合うと、猫はにゃあん、と一声鳴いた。  ……何か、おかえりって言ってくれたのかな、今の。  そんな風に思いながら、買ってきた夕飯の材料を台所に置く。がさがさと袋から買ってきたものを出しながら、ちらりと横目でコタツを見る。  猫缶でも買ってこれば良かったかな。  しかし、エサをあげてこの部屋に居着かれても困る。 「…………」  もやもやとしながらも、買ってきた食材や生活雑貨を、収めるものは収めるべき所へ収め、今すぐ使うものはそのまま出して置いてから、部屋着に着替えた。  猫を尻目にお夕飯作りに手を付けたが、猫は料理の匂いが部屋中に漂ってもなんら反応しなかった。コタツの上に料理を運んでも、近づいてきたり、ましてやちょっかいを出してくることなど全くなかった。むしろ、台所から運んできた料理を卓上に置こうとした際に卓上の真ん中で陣取っていたのから配膳を避けてか自ら卓上の角へ移動したのが「お、賢いな」と思ったくらいである。
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