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そんな疑問を抱え始めたタイミングで、男の人が動いた。
びくっとしてそちらを見る。
うつ伏せた状態から上げられた顔と目が合う。
男の人はぎょっとして、周りを見回した。
「こっ……ここはどこですか?」
「あー……えっと、私の部屋、です」
小さく挙手しながら私は答えた。
「えっ? なんで!?」
いや、なんでって訊かれても……。
ちらりと猫を見る。
猫は何事もないような態度で毛繕いをしていた。
「……とりあえず、起きてもらっていいですか?」
私の言葉に、男の人は自分がうつ伏せるような体勢で居ることに気付き、慌てて身を起こして座り直した。
「なんで正座なんですか」
「み、見知らぬ人の部屋なのでなんとなく……」
あ、真面目な人なのね。
「…………」
「…………」
沈黙。
テレビの音だけが室内に響く。映画は終わってしまっていて、コマーシャルが流れていた。
しばらくして。
「えっと、見知らぬ方の部屋に居るのも失礼ですから、帰りますね」
沈黙に耐えられなかったのか、そう言ってそそくさと退室しようした男の人が立ち上がったとき。
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