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「……あ、えー、えーっとですね、このままだとお互い見知らぬ同士のまま時間を過ごしちゃいそうなので、とりあえず、自己紹介でもしませんか?」
とりあえず空気を変えよう。
そう思って提案する。
男の人はぽかんとしていたが、私の意図を察したようで、「そ、それもそうですね」と言って頷いてくれた。
「じゃあ私から。この部屋の主の貴馬込楠葉です」
言って、私は小さく頭を下げた。
「あ、えと、こ、小塚昴です」
相手も小さく頭をぺこりと下げる。
「…………」
「…………」
沈黙再び。
っ、じゃなくて。
えーっと、えーっと、話題話題話題話題……。
全力で脳を働かせて話題を探していると。
テレビが急にニュース番組へと切り替わった。
『速報です。つい先程、我々のテレビカメラが火事の現場を捉えました。中継が繋がっています……』
アナウンサーの緊迫した声にテレビに釘付けになる。
『……えー、こちら現場です! 二階建てのアパートが燃えています! 場所は〇×西区の……』
「西区……?」
その呟きに男の人……小塚さんを振り返る。小塚さんは正座から膝立ちになって身を乗り出していた。
「知ってる場所ですか?」
私は小塚さんに訊く。
「ここ……オレのアパートだ……」
呆然としたように画面を見つめる小塚さん。
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