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翌日。
仕事の休憩時間に、給湯室で職場の同僚であるサヤコに「コタツからいきなりミカンが出てきたとしたらどうするか」と、訊いてみた。するとサヤコは真面目な顔で、
「ラッキー♪ と思って食べる」
と、答えてくれた。
訊く相手を間違えたと思った。
「……他の人に訊いてみる」
「急に変なこと訊いといて何よー」
「いや、だって、全く参考にならないんだもん」
「アンタほんとハッキリ言うわねー」
やいのやいのと言い合っていたら。
「おー、なんか楽しそうだな、話題はなんなの?」
たまたま給湯室に飲み物を入れに来たらしいアキラ(これまた同僚である)が会話に入ってきた。
「あ、いいところに来た。あのさ」
私は同じ質問をぶつけてみた。
「んー、そうだな-、そのまま放置して腐らすのも嫌だし、もったいないし、ヤバそうじゃなきゃ食べるかな」
アキラは考えながら答えてくれた。
「まともな答えをありがとう」
私はアキラの肩に手を置いた。
「ちょっとー、アタシの答えがおかしいみたいな扱いなんなのー?」
「みたいじゃなくておかしいんだってば」
「なに、サヤはなんて答えたの?」
「ラッキーと思って食べる、って」
「サヤ……お前な……」
「何よ」
呆れたアキラの視線に、サヤコが噛みつく。そんな二人を見ながら、帰ったらあのミカンは食べてみようかな、とぼんやり思った。
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