こたつねこ。

8/19
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 翌日。  仕事の休憩時間に、給湯室で職場の同僚であるサヤコに「コタツからいきなりミカンが出てきたとしたらどうするか」と、訊いてみた。するとサヤコは真面目な顔で、 「ラッキー♪ と思って食べる」  と、答えてくれた。  訊く相手を間違えたと思った。 「……他の人に訊いてみる」 「急に変なこと訊いといて何よー」 「いや、だって、全く参考にならないんだもん」 「アンタほんとハッキリ言うわねー」  やいのやいのと言い合っていたら。 「おー、なんか楽しそうだな、話題はなんなの?」  たまたま給湯室に飲み物を入れに来たらしいアキラ(これまた同僚である)が会話に入ってきた。 「あ、いいところに来た。あのさ」  私は同じ質問をぶつけてみた。 「んー、そうだな-、そのまま放置して腐らすのも嫌だし、もったいないし、ヤバそうじゃなきゃ食べるかな」  アキラは考えながら答えてくれた。 「まともな答えをありがとう」  私はアキラの肩に手を置いた。 「ちょっとー、アタシの答えがおかしいみたいな扱いなんなのー?」 「みたいじゃなくておかしいんだってば」 「なに、サヤはなんて答えたの?」 「ラッキーと思って食べる、って」 「サヤ……お前な……」 「何よ」  呆れたアキラの視線に、サヤコが噛みつく。そんな二人を見ながら、帰ったらあのミカンは食べてみようかな、とぼんやり思った。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!