第 3話 ある独白

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 この人は何を言っているのだろうか、この人の名は鳥迫秀一(とりさこひでいち) 私、鳥迫月夜(とりさこつくよ)の祖父の鳥迫秀一なのだ。帝国陸軍と言えば先の戦争の時のこの国の軍隊のはずだ、少し前に戦後90年を迎え次は節目の100年だと大騒ぎしていたのを記憶している、終戦時祖父は10歳にも満たないはずである。子供店長ならいざ知らず子供中佐はありえない、いくら兵士が不足していたとしてもだ。  写真にしても古くて粗くて顔など判別出来ない代物だ、そもそも祖父は私が生まれた時から80越えのおじいちゃんなのだ、若い頃の顔などわかるわけがない。  死を目前にして何かの妄想に囚われているのだろうか。 「 当時 わしはある特殊な任務に就いていた これはその時の写真だ 任務は中国地方のとある奥深い山に行き あるものと契約を取り交わすというものだった ”敵を討ち滅ぼす力となれ ” と その時 我が国はもはや後がない状況にまで追い込まれておったからのう 戦う武器もなければ戦う兵もいない 竹槍を持って女子供国民総がかりで本土決戦に挑み玉砕する未来しか見えなんだ まさに神頼みするしかない状況じゃ そして 本当に神様に(すが)ったのじゃ 」  神風が吹く、かつてのこの国の人たちは信じていたのだろうか。     
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