第二章:孤独

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「本基地に向け降下する機影を確認。識別…SP二号機です」  ナビブ砂漠主要基地[EⅧ]司令室の通信士が報告する。 「予定通り降下できたようだな…よし、カオルム中将に繋げ」  EⅧの責任者[リム・パオガン]准将が通信士に伝える。  リムはアイパーヘアーの髪色がブロンズ色で頬が何故か少し黒みがかっており、胸板が厚い。年齢は51歳。通信士が「了解」と返事をした数秒後、天井の大型モニターにガラッドが映し出された。 『おお、リム君。SPは無事に降下できたのかね?』 「カオルム中将、お疲れ様です。たった今、機影を確認できました。あの高度で確認できたのなら無事に降下出来たかと」 『ふむ…開発部も無能では無かった訳だな』  ガラッドは安堵したように言う。リムも「そうですな」とガラッドに合わせる。 「あと一つ報告します。我が基地でもアウラーの生産に成功しました」  ガラッドは目を見開く。 『本当かね!?君の基地は確か…』 「ええ、生産施設は乏しいです。その為、ラックス兄弟で[ビーストマシン]を含め迎撃する予定でしたが…資材さえあれば量産することも可能かと」  ガラッドは『…ふむ』と顎に手をあて、考える。そこでリムは一つ提案した。 「あと一週間ほどで南米の[EⅥ]から補給物資が届きます。その際にラックス兄弟をその艦に乗せ、EⅥと太平洋を経由し、北京本部…[EⅠ]に異動させるのはいかがでしょう?」  リムの提案にガラッドは苦い顔をする。 『最終的にEⅠに送る予定ではあったが…太平洋を経由させるのはな…』 「何か問題でも?それとも地上のルートを使い、奪還作戦に参加させるのですか?」 『いや、それはさせん。理由は…分かるだろう?』 「…そうですね。撤回させていただきます。申し訳ありません」  その場にいる他の人間にはこの会話の意味は分からなかった。 『とにかく…君の基地で生産できたのならEⅠに異動させても問題は無さそうだな。どの経路を使うかは考えておく。今はビーストマシンの迎撃に専念したまえ。[ヘビーセンチュリオン]が一隻落とされた今、アウラーを一機生産できただけでは油断は出来んのだからな』  リムが「了解しました」と答えると、ガラッドから通信を切った。三日前にEⅧ近くの主要基地[EⅦ]が宇宙軍に制圧されていたのだ。
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