第二章:孤独

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『ラックス少尉、そのまま基地の滑走路に着陸をお願いします』 「了解ッス」  通信士の声に、シェスは素直に応じる。アーマーをつけていた時よりかは軽いが、宇宙に比べると重い操縦桿を動かして機体を着陸態勢にする。シミュレーション通り、風で少し流されるため微調整も加える。そして着陸寸前になったところでパラシュートをパージさせ、メインスラスターと脚部のスラスターを噴射させて減速させながら滑走路に着陸した。  着陸した際の衝撃は想像以上で、少し呻いてしまったが、それは一瞬なもので、シェスはすぐに目を開ける。モニターの正面には立派な施設、左右には格納庫であろう施設の前にロウラーが並んで立っていた。  するとレーダーにロウラーの陰から複数の生命反応が確認され、近づいて来ているのである。シェスはこの基地の兵士だと察し、ヘルメットを外しながらコックピットハッチを開ける。開けた瞬間、異様な暑さを感じるも、安全ベルトを外した時、男の声が耳に届く。 「お前かー!?ディイスの兄貴はー!?」  突然弟の名を聞きシェスは驚くが、コックピットから出ながら「そうッスー!」と答える。そして重力下で用いられる乗降用ワイヤーを降ろした。  コックピットから地面までは約10メートルはある。無重力ではフワフワと浮かんで移動できたが、重力下では飛び降りる形になってしまう為、重力下ではワイヤーを使って乗降するのである。  シェスがヘルメット片手にワイヤーをつたって地上まで降り立つと、そこには十数人で囲まれていた。暑さからなのか全員タンクトップや自前の半袖姿で、軍服をちゃんと着ている人間は一人もいなかった。すると囲んでいる人間の中心にいた小柄な男が近づいてきた。 「おー、さすが兄弟。似てんなぁ」  顔を覗き込みながら小柄な男は近付いて来る。 「…誰ッスか?アンタ」  率直な言葉を口にする。男は軽く眉を顰めるが、それとほぼ同時に聞き覚えがある声が聞こえてきた。 「兄さん!上官にそれは無いでしょ!?」 「!ディイスか!?」  シェスは囲んでいる人の中から声の主を探そうとするが、その前に小柄の男が「おいおい…」と呆れた声で止める。 「まずは俺からだろ?シェス君よ」  自分の名を呼ばれたことでシェスの注意が再び男に戻る。
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