第二章:孤独

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「では一度戻れと?」  アテンダーの格納庫でエームはあの男と通信をしていた。内容は男が身を潜めている暗礁空域へ戻れといったものだった。 『ああ。お前には地球に降りてもらう。その為に機体を重力下でも活動できるよう改修を加える』  エームの考えている通りだった。シェスを撃ち損ねた事で、自分も地球に降ろされると考えていたのである。だが、一つだけ予想とは異なった。男が怒るわけでも、呆れるわけでも無く、いつもの態度なのである。これが異常に不気味だった。そして男はさらに意味が分からない指示を出してきた。 『お前にはシェス・ラックスをこちら側に引き込んでもらう。改修もあくまでその為のものだ』 「ま、待って下さい。引き込むとはどういうことでしょうか?」  エームは思わず口を挟んだ。 『そのままの意味だ。シェス・ラックスをこちら側に引き込んでもらう』  男は言いきる。それでもエームは理由を聞く。 「何故です?今までは消せと言っておられたではありませんか」 『お前が知る必要は無い』  エームは返す言葉を探したが、その前に男が一方的に指示を出す。 『とにかく一度戻れ。引き込む方法はそこで説明する』  通信は切られた。エームは男の真意が全く分からなかった。
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