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もうすぐ夜が明ける気配がする。フットライトの小さな灯りをかき消すような蒼い蒼い闇の中で、どうしようもなく揺れてとまらない気持ちと闘っていた。
キングサイズを優に越すかと思えるベッドの上で、少し手を伸ばせばすぐにも触れ合えるところで静かな寝息を立てているこの男と、昨夜の続きをしたいだなどと疼いてる自分自身も信じられないでいる。
つい昨日まで、自身の視線が追い掛けていたのは帝斗という穏やかな男だ。その……はずだ。それなのに、今は全く別のことで頭をいっぱいにしている。
穏やかさとは程遠い、強引で勝手極まりないはずの――この男のことで胸が熱くなっている。帝斗に抱いていた淡い恋慕とは比べ物にならないくらいの熱い何かが全身を這い回るようで、苦しいくらいの思いと闘っている。
ふと、いつかお客の女が言っていたことを思い出した。
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