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この焔とは、互いにナンバーワンを取ったり譲ったりの間柄だ。つまり、傍から見ればホストクラブ内で一番のライバルといったところか。
故に遠慮なしのきわどい言い合いも、左程珍しくはない。――が、それにしても今回は度が過ぎたストレートさだった。
「な……に、ふざけたこと抜かしやがるっ……! てめ、頭おかしいんじゃねえか?」
「オカシイのはどっちだ。仕事も上の空で、あいつばかり目で追い掛けているのを気付かれてねえとでも思ってたか?」
冷笑と共に更に信じ難い言葉を突き付けられて、紫月は面食らった。
「なら試してみねえ? 俺でよけりゃ代わりになってやんぜ?」
「は――?」
言うが早いか、突如抱き寄せられて、思わず唖然――瞳をパチパチとさせながら硬直してしまった。
背中を壁に押し付けられて身動きさえ儘ならない。自分よりも若干上背のある男に詰め寄られては、咄嗟にはどうにもしようはなかった。
そんな戸惑いを更に追い詰めるかのような、耳元ぎりぎりに這わせられる唇の感覚にギョッとなって身を捩る。
「っカ……野郎ッ……何しやがるてめえっ……! ふざけんのもたいがいにっ……うあっ……」
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