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なんで宮野にこんな話をしているんだろう。だけど、今は誰かに聞いて欲しいと思った。
「それは……その、ここにいるから、じゃないですか?」
遠慮がちな宮野の指摘に、俺の心臓はドキリと音を立てた。
「……どういう意味だ?」
返ってくる答えは分かっているのに、それでも聞いてしまう自分が憎らしい。宮野はそんな俺の気持ちに気づいているのかいないのか、言葉を選びながら話を続けた。
「だって、そうじゃないですか。弟さんが亡くなった場所から離れずに、ずっと弔い続けるなんて、そんなの……そんなの普通じゃないですよ。他に気持ちの区切りをつける方法だってあったのに、それを選ばずにここにいることを望んで、毎日花を手向(たむ)けて……それじゃあ、いつまでたっても気持ちの整理なんてつかないですよ。――小豆澤さんは、囚われているんです。そろそろ前に進まないと」
ああ、そうさ。宮野の言う通り、俺はこの学園に閉じ込められた地縛霊みたいなものだ。
弟――、光(みつ)希(き)の面影を追って、自らこの地に縛られることを望んだ。その選択に後悔はない。
「あんたの言いたいことは分かる。だけど、前にも言った通り、これは俺が望んで選んだ道なんだ。そのことで、もし、あんたがこれ以上俺につきまとうなら――」
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