青い春に、芽吹いた怪異。

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「あーっもう! 分かりました! 分かりましたって! 確かに、お節介が過ぎたのは謝ります。だから、そんなに怒らないで下さいよ! 私は喧嘩がしたわけじゃないんですっ! 今日は一個人として、お線香を上げに来ただけなんですから。ねっ?」  宥めるように手を振り、宮野は俺に敵対心がないことをアピールする。俺としても、仏壇の前でこいつとやり合う気はない。それに、せっかく線香を上げてくれたんだ。その気持ちは素直に受け取りたい。 「……俺もちょっと言い過ぎた。あんたは心配してくれているかも知れないけど、本当にこれでいいんだ。もう俺に構わないでくれないか」 「もちろん、私にも良心はありますから、立ち入っちゃいけないラインは理解しているつもりです。でも、もし誰かに話を聞いて貰いたくなった時は、是非! この私、新聞部の宮野唯子を思いだして下さいね! なんでも話聞きますから!」  そう言って宮野は自分の胸を叩く。それはおちゃらけてはいるけれど、これまでの邪(よこし)まな空気は感じなかった。これが、宮野の本来の姿なのだ。だから、俺も鼻で笑いながら軽口を叩く。 「それって、結局取材だろ?」 「うふふふふ。どうでしょう?」  不敵な笑みを浮かべ、宮野は否定も肯定もせずに人差し指を唇に当てた。  珍しく心の通った会話をした直後、宮野の視線が仏壇の脇で止まる。     
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