青い春に、芽吹いた怪異。

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「確かに、どこの学校にも怪談と呼ばれる類いの物はあります。基本的にテンプレ話だし、長年語り継がれたカビの生えたような話が多いんですけど……」  どうにも歯切れの悪い調子で、宮野はその先の言葉に詰まった。 「けど?」  話の先が読めず、俺はせっつくように宮野に先を促す。 「実は最近になって、この学園の七不思議に変化があったんです。増えたんです。突然、怪談が」 「増えた? 急に? なんでまた?」  怪談に興味があるわけではないが、こんな中途半端な話し方をされたら気になる。俺が相槌を打つと、宮野は水を得た魚のように喋り出した。 「そう! そこなんです! こういうのって、事実や勘違いが人を介す間に脚色されて、長い期間を経て怪談になっていくはずなのに……それが、ここに来て急に増えた。不思議だと思いません?」 「急に増えたのなら、それは噂じゃなくて事実なのかもな。それが学校設備の不具合によるものならば、確認しておかないと大変だ」  人間は低周波や磁場に異変が起きると、いわゆる心霊現象と同じような感覚を味わうと聞いたことがある。耳では拾えない音域に対して無意識に「なにかが、おかしい。変だ」と感じるのだそうだ。もし、その学園内で急に怪談が増えたのなら、電気設備に異常が起きているのかもしれない。それならば、点検をしておく必要があるだろう。     
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