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「その噂は本当に本当なのか?」
つとめて冷静に尋ねると、宮野は胸ポケットからメモ帳を取り出してぱらぱらとめくった。そして、視線を手元に落としたまま、考えをまとめるように話し始める。
「私も気になって取材しているのですが、まだ正確な情報はつかめていなくて……でも、ここ半年くらいで急に話題になってる点や、『プールの人食い鮫』の話を聞くに、もしかしたらただの噂じゃなくて、現実になにかが起こっているのかも? って思えて……」
「それで、俺にその話をしに来たってわけか」
「ええ、『不謹慎だ! ふざけるな!』って言われるのも覚悟の上です。けど、もしこの噂で小豆澤さんの気持ちに整理がついたり、生きる希望になったりするのであれば、伝える意味はあるのかな? ――と」
宮野は宮野なりに、ある種の覚悟を持って俺に会いに来たのだろう。詰られたり、罵倒されたりすることも想定した上で、それでも自分の信じる道を通そうと腹をくくったんだ。
そう思うと、宮野は存外悪い奴ではないのかもな。ただ、異常にゴシップ好きなだけで。
「……その話、もっと詳しく聞かせてくれないか?」
俺が続きを促すと、宮野は少し困った顔になる。
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