青い春に、芽吹いた怪異。

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「んー。実は私もそれほど詳しくは知らないんです。ただ、見た人の話によると、時間は深夜ではなくて午後八時から十一時くらいだそうで。まぁ、いくらうちの学園が都市部にあるといっても、夜の校庭は暗いですからね。見間違えの可能性も高いでしょう」  確かに、空高学園は東京のど真ん中にあるが、敷地面積が広いため繁華街のような明るさはない。特に部活動が終わった後の校庭は、申し訳程度の街灯が点いているだけだ。さすがに真っ暗とは言わないまでも、夜の校庭の薄暗さは人の不安や恐怖を煽る。ちょっとした違和感を怪異だと思い込んでしまうのも納得できよう。  俺は宮野の話をはなっから信じているわけではない。『叫びながら校庭を走る銅像の怪』の話をされても、心の中では「どうせ眉唾だ」と冷めた考えを持っていた。それでも、他人の口からはっきりと「見間違えの可能性が高い」と指摘されると、気持ちが沈んでいくから不思議だ。 「あっ、でも、でも、でも――」  宮野が思いついたように顔を上げる。 「でも?」  本日、何度目かの思わせ振りなタメに、俺は苛立ちを覚えた。――が、もはや気にしたら負けだ。宮野が望んだとおりの相槌を入れ、話の続きを待つ。 「ほら、いわゆる『視える人』っているじゃないですか? そーゆー人なら、暗いとか関係なく、はっきり視えるんじゃないかな? って」 「『視える人』って、要するに幽霊とかが視える人ってこと?」     
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