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日常を乱すもの。
「ハルー! ハルゥー!」
仕事を終え家で休んでいると、玄関先から珍妙な声が聞こえた。性別のはっきりしない幼児のような声色で、ただひたすらに叫んでいる。
「ハルー!」
「聞こえてるっつーの。今開けるから、静かにしてくれよ」
何度も繰り返される絶叫に呆れて、俺は独り言を呟きながら玄関へと向かう。
すりガラスの向こうには、二、三歳くらいの背丈の影がピョンピョンと跳ねていた。とはいえ、ここは学園の敷地内だ。当然、幼児はいない。それに、声の主のシルエットはずんぐりむっくりとしていて、人型とは明らかに違う。
サンダルをつっかけて玄関を開けると、そこは紛れもないジェンツーペンギンの姿 があった。
――ジェンツーペンギン。ペンギン科・アデリーペンギン属に分類されるペンギンの一種で、両目をつなぐカチューシャのような白い帯模様が特徴とされている。
そのジェンツーペンギンが、なぜかこの学園では普通に生息していた。いつから、どうして、なんのためにここにいるのかはまったくもって謎のままだ。俺自身、何度も報告を上げているのだが、学園側もジェンツーに関してはなんのアクションも起こさず黙認を貫いている。
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