日常を乱すもの。

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「だから、ペンギンにとってベーコンは、塩分多すぎるんじゃないかって思ったんだよ。いくら生きる上で必要不可欠といっても、そこまで塩分いらないだろ。それに、病気になられたら困るからさ。お前が体調崩したら、動物病院に連れて行かなきゃだし……っていうか、動物病院で診てもらえるのかな?」  ペンギンにも分かりやすいように順序立てて説明したつもりなのだが……ジェンツーは俺の言葉を聞くと、柱からピョンと飛び出して得意げな顔をした。 「それは間違いだよ、ハル」  そう言うと、右翼を前に出し、細かく左右に振った。人間でいうところの人差し指を立てて、「チッチッチッ!」とするジェスチャーに似ている。そして俺の足元までやってくると、ずずいっ! と背伸びをして顔を詰めた。本当に少ししか近づいてないけれど。 「だってさ、考えてもみてよ。ペンギンは海を泳いでるんだよ? ってことは、ずっとしょっぱい海水を飲んでるってことさ。だから、ベーコンの塩分なんて、大した問題じゃないよ。きにする必要はないと僕は思う」  自信満々に言い切るジェンツーを見ていると、細かいことを気にしている自分が馬鹿らしくなる。それに、俺の勘が正しければ、こいつに餌を与えているのは俺だけじゃない。多分、体育教師の角田あたりが鼻の下を伸ばして魚を与えているはずだ。だから、とやかく言ってもどうにもならない。人間もペンギンも、生活習慣病は自己責任ってことだな。 「まあ、お前がそう言うなら、それでいいけど」 「だからさ、早くベーコン焼いてよ!」     
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