青い春に、芽吹いた怪異。

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 俺は、気持ちが滅入っていくのを、この作業のせいだと決めつけることにした。  体を小さくまとめて地面にしゃがみ込むこの姿勢は、見た目の地味さに反してかなり負担がかかる。足はしびれるし、うかつに立ち上がると眩暈がして倒れそうになるのだ。特に長身で無駄に手足の長い俺のような体格は、雑草取りには向いていない。だから、少々鬱々とした気分になるのもしょうがない。すべては血の巡りが悪いせいなのだ。脳の血流が滞ったせいで、ちょっと暗い気持ちになっただけ。ただそれだけ、そうに違いない。  ミシミシと軋む体を起こし、背伸びをする。予想はしていたけれど、体の血が引き目の前が暗くなっていく。 「ちょ! お前、マジかよ!」  朦朧とする意識を呼び止めたのは、思春期特有の上擦った男子学生のはしゃぎ声だった。紺碧のネクタイの色から察するに、今年入学したばかりの新入生だろう。静寂を切り裂くような音量で騒ぎ立てる彼らの姿は、「周りの迷惑など、考える価値もありません!」と主張しているように思えた。俺のいる場所とは反対側の、体育館へ続く渡り廊下の真ん中で立ち止まると、彼らは互いに小突き合い、また大声を出した。何気ない日常の風景だけれど、俺には青春を謳歌する彼らが、強烈な彩度で輝いているように見えた。     
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