青い春に、芽吹いた怪異。

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 だけど、油断してはいけない。こいつは中学生と間違われるほどの外見だけれど、中身は大人すら出し抜く強(したた)かな奴だ。庇護欲を掻き立てる見た目は、対象者を捕食するための擬態でしかないのだ。宮野自身も自分の武器をよく理解しているから、滅多なことでは素の自分を見せない。今だって、小首を傾げて困ったような顔を作り、こちらの出方を伺っている。俺に本性がバレていると分かっているのに、だ。  正直、こいつと関わるのはまっぴらごめんだ。さっさと目の前から消え失せて欲しい。だけど、そう伝えたところで素直に聞き入れてくれるはずもないだろう。  俺は露骨に宮野から視線を逸らすと、黙って背を向けた。雑草を入れたゴミ袋を手に持つと、この場から立ち去るべく足早で歩き始めた。  あからさまな嫌悪を示せば、さすがの宮野も諦めるだろうと踏んだのだが……予想に反してしぶとく後を追ってくる。足の長さが違うせいで、せかせかと小走りになりながら俺の名を呼ぶ。 「小豆澤さん! 小豆澤さんってばっ! ねぇねぇ!」  このまま無視をしたら、こいつは家までついてくるだろう。それに、傍から見たら完全に俺が悪者だ。もし噂好きの女子にでも見られてあらぬ誤解をされたら、俺の社会的地位は失墜してしまう。別に大層な地位があるわけじゃないが、この学園を追い払われるのだけは避けたい。  ――クソッ! これがこいつの常套手段だ。こうして相手の弱いところを突いて行動を制限する。俺は観念して足を止めると、ありったけの侮蔑を込めて宮野を睨んだ。 「……なんの用だ?」     
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