青い春に、芽吹いた怪異。

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 声色に込められた怒りに、気づかない訳がない。だけど宮野は自分のペースを崩さぬまま、神経を逆なでするような軽口を叩く。 「んもうっ! そんなに邪険にすることないんじゃないですかぁ? もっと心を開いて下さいよぅ。ちょっとくらい私と話したって、罰は当たりませんよー?」  ぷくっ、と頬を膨らませ、宮野は拗ねるように上目遣いになる。こいつの本性を知らない人間ならば、これで十分懐柔できるのかもしれないが、俺は違う。 「お前みたいなのに心を開いてもなんの得にもならないだろ。だいたい俺は詮索されるのが大嫌いなんだよ」 「そんな言い方しなくても……ああ、そうか。まだあの時ことを根に持ってるんですね? そりゃ、正直悪かったなって思ってますよ。だけど入学早々に学校の裏事情を知って、知的好奇心が騒いじゃったっていうか、正義感に駆られちゃったっていうか……んーまぁ、確かに人の気持ちも考えずに暴走しちゃってましたね。……その、ごめんなさい」  そう、俺が宮野をここまで嫌うのにははっきりとした理由がある。それは、こいつが入学したばかりの頃。今から約二年前の話だ。     
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