青い春に、芽吹いた怪異。

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 当時も今も、宮野は新聞部員として活動をしていた。とはいえ、新聞部というのは宮野一人が勝手に名乗っているだけで、学園から正式な部活動としては認められていない。だけど、その実力はなかなかのもので、興味と時間のある限り学園内のありとあらゆる情報を収集していた。その対象はこの学園に関係するすべての者に及び、宮野はその全員と実際に会話をしたことがあるらしい。  そんな調子でうろちょろと嗅ぎまわるため、学園にとっては苦々しい存在として知られていた。そのため、今でも毎期ごとに行われる全職員対象の会議では、必ず教頭が「軽々しく宮野と喋らないように」と苦々しい顔で言い含めている。  人畜無害そうに見えて、その実この学園一の鼻つまみ者なのだ。  ジャーナリズムの御旗(みはた)の元なら、どんな手段も厭わない――そう信じて疑わない節があった。だけど、強すぎる正義感は、時として他人を傷つける。そして宮野は、それを知るにはまだ若過ぎたのだ。  だから当時、学園と俺の間にある利害関係に気づいた宮野は、義憤に駆られて暴走した。学園に都合よく使われている俺を救うべく、「学園に蔓延る悪を一掃しましょう」と提案してきたのだ。もちろんそれは勝手な憶測で、俺はその手を取らなかったし、そんな俺に宮野は失望した。そして、独りで戦おうとした挙句、大問題に発展して一時自宅謹慎にまでなったのだ。俺もそれなりに被害を被ったので、宮野に対しては同情や感謝よりも、関わり合いたくない気持ちの方が強い。  過去を思い出して複雑な感情が蘇る。この期に及んで、宮野は一体なんの用事があるのだろう。     
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