言の葉

54/86
1438人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
「…こんなにステキなウェディングドレスを着せてもらって。ステキな結婚パーティーを開いてもらって。お父さんと入場させてもらって。誓いの言葉もこの結婚指輪ももらって。愛してるまでもらえたのに……これ以上もらったら、私…」 行かないでと、言ってしまう…。 「…蓮、お前、俺から離れるつもりなの?」 「違う…」 「また、すり抜けて行くの?」 「違う!」 「何が違うんだよ?離れるってなんだよ?」 「慶太郎はもうすぐオーストラリアに行っちゃうじゃない!」 ハラハラも期待も会場から消えた。 慶太郎の想いに、蓮の想いに。 ただ、息を飲んで見守っていた。 オーストラリア。 この言葉に、この場をどう収拾したものかと。 ただ一人、浜野だけが焦っていた。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!