不実

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まだ眠たくて、うつらうつらとした意識の中で目を覚ました。 スマホを手に取ると、十時十八分だった。 ヤバ…! 会社に電話! 蓮は慌てて会社に電話をかけた。 まだ、身体は寒かった。 慶太郎…会社に行ったのかな…。 「お電話ありがとうございます、aozora galleryです」 電話に出たのは、範子だった。 「おつかれさまです。吉野…じゃなかった、谷中です」 喋りながら蓮は驚いた。 声はかすれて、俗に言うオネエのような声になっていた。 「蓮?何、どうしたのその声!」 電話の向こうの範子の驚きぶりが眼に浮かぶようだった。 「風邪引いちゃった…。専務いらっしゃいますか?」 ちょっと待ってね、そう言うと保留音が流れた。 喉も痛い、身体も痛い…。 この後、病院行かないとな…。 「おはよう、大丈夫か?」 無断欠勤を責められるかと思っていたのに、専務の第一声は蓮の体調を労わるものだった。 「ご連絡遅くなって…」 「いい、しゃべるな、ひどい声じゃないか。朝一で谷中くんから連絡もらってるから、しっかり治しなさい。店舗には私から連絡入れておくから。何か引き継ぐ業務はあるか?打ち合わせ何か入っていたっけ?」 慶太郎、電話してくれたんだ。 「特にありません…はい、大丈夫です。……申し訳ありません…では、お休みいただきます。…よろしくお願いします…」 通話を切った。 LINEが入っていることに気が付いて、通知をタップした。
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