78人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
黒を基調としたシックな店内を淡く照らすブルーのバックライト、静かに流れるピアノジャズが、今夜もすさんだ心を静める。
「マスター聞いてくださいよ」
カウンター席に腰かけるなり、薫はいつもより沈んだ声を発した。その原因をすぐに把握した彼は、グラスに水を注ぐとそれを差し出す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
すがるような気持ちでグラスを手にし、一息に飲み干す。冷たい水が、体内の不快感をなだめるように喉を流れた。
「大丈夫ですか、薫さん」
「大丈夫、と言いたいところですけど、今日も臭い人に出くわしてしまって……」
「そうですか。それは災難でしたね」
最初のコメントを投稿しよう!