【女優の卵】

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「んでもさあ、どうも決まらないよねえ。安物だからかなと思って、高いのも買ってみたけど、なんとかホテル御用達とかさ。でもイマイチね。だったら作ってやろうと思って!」 「気に入ってくださるといいのですが」 私は少し不安になりました。そんなにこだわりがあるのもを、私は作れるのでしょうか? 「あはは、気に入るまで作るわ!」 それは心強い。 「でも風呂上がりにそこまでこだわるのでしたら、浴室にもこだわりが?」 「うーん? ないけど」 そう言いながらも天井を見つめます。 「でも……そうよね、いつか主役張るような女優になったら、膝を抱えなきゃ入れないような小さな湯船じゃなくて、足を伸ばせる大きなのがいいわね」 「そうですね」 「ジャグジーとかあったりして」 「湯船が光ったり?」 「そんなのは要らない」 「──失礼致しました」 「でもサウナとかミストとか、ちょっと多機能なお風呂にしたいなあ……」 「夢に向かうために努力なさってるなら、きっと叶うと思いますよ」 少なくとも、お店にいらした時のあなたにはオーラがありました。 私に未来を見る力はありませんが、あなたなら成し遂げると思いますよ。 おしゃべりしながらも、私のラフなデザイン画にあれこれご注文を頂き、布のサンプルが届いたらご連絡しますとお別れ致しました。 さて、素敵なバスローブをお作りせねば。
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