第1章 出会い

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 おれがミケと出会ったのは、会社帰りの夜の公園だった。    その日おれは決まりかけていた契約を取り逃がし、すっかり落ち込んでいた。やけ酒でも飲もうと思い、駅前のスーパーで缶ビールと鶏の唐揚げを買ってとぼとぼと歩いていると、途中の公園ですっかり花びらの散ってしまった桜が街灯に照らされているのが目に付いた。  先週は満開で、大勢の花見客が押し寄せてきていたのだが、週末の風雨で葉桜となってしまった今は、誰からも見向きもされず、寂しそうに風に揺れている。  おれはそんな桜の木に引き寄せられ、誰もいない公園のベンチに腰掛けて、葉桜を見ながらビールを飲むことにした。どうせアパートに帰っても誰もいないのだから。  そうして一人で唐揚げをかじっていると、どこからか一匹の薄汚い三毛猫がのそのそと近づいてきた。まだ子猫のようだ。野良猫だろうか。
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