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猫はおれの前にちょこんと座り、にゃあ、と一声鳴いた。おれの唐揚げをじっと見ている。
「おまえもひとりぼっちなのか。少し分けてやるから、一緒に食べよう」
おれは唐揚げの衣をはがし、肉を小さくちぎって手のひらに載せ、猫の前に近づけた。猫はくんくんと匂いを嗅ぎ、むしゃむしゃとうまそうに食べた。
あっという間に食べ終わって舌なめずりをすると、猫はまたおれの方を物欲しげにじっと見ている。
「なんだ、もっと食べたいのか」
にゃあにゃあ、と猫は二声鳴いて答えた。唐揚げをもう一つ取りだして、肉をちぎってやると、猫はまたうまそうに食べた。
「これでもうおしまいだ。じゃあまたな」
おれは立ち上がって去ろうとした。だがふと後ろを見ると、猫はあとからついてくる。
「おい、ついてくるなよ。明日また買ってきてやるから」
すると猫はまた、にゃあ、と一声鳴いて、公園の植え込みの中へ戻っていった。
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